心臓血管センター(循環器内科)

「人間は血管とともに老いる」(“A man is as old as his arteries.”)。これはアメリカの内科医オスラー博士(William Osler: 1849~1919)の有名な言葉です。血管をいかに若く保つことができるか、動脈硬化の進展をいかに予防することができるかが健康に長生きできる秘訣とも言えます。そのためには高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙といった生活習慣病の管理が非常に重要となります。一方、超高齢化社会をむかえた現在、動脈硬化を基盤とする心臓・脳血管疾患、その他の血管疾患が増加していることも事実であります。われわれはこれらの医療ニーズに対応すべく、主に心臓疾患の急性発症に備えて休日・時間外を問わず循環器専門医による24時間診療体制を整えています。
地域の住民のみなさまに「安心・信頼の医療」を提供できるように努力を重ねてまいります。

○診療内容

当センターにて取り扱う代表的な疾患を示します。

<心疾患>
虚血性心疾患(心筋梗塞 狭心症 無症候性心筋虚血) 心不全 不整脈 心臓弁膜症 心筋症など

<末梢血管疾患>
下肢閉塞性動脈硬化症 腎動脈狭窄症 鎖骨下動脈狭窄症 大動脈解離 大動脈瘤 内シャント狭窄症 深部静脈血栓症 下肢静脈瘤など

<肺循環疾患>
肺血栓塞栓症 肺高血圧症

<生活習慣病>
高血圧 脂質異常症 糖尿病 喫煙(ニコチン依存症)

<睡眠障害>
睡眠時無呼吸症候群(中枢性・閉塞性)

<その他>
職場健診・学校健診における心電図異常の二次精検 禁煙治療 など

○診断法

心臓ならびに血管の病気が疑われた場合は、診断のための検査が必要となります。検査には外来で可能なものと入院が必要なものがあります。以下、当センターで実施している主な検査を示します。

<外来スクリーニング検査>
心電図検査(安静12誘導 運動負荷(トレッドミル エルゴメーターなど) 24時間ホルター イベントホルター 植込み型ループレコーダー(左図)

心肺運動負荷試験(CPX検査)

心臓超音波検査(経胸壁 経食道)

血管超音波(頚動脈 下肢動脈 下肢静脈 内シャント 他)

血管脈波検査(CAVI ABI TBI)

64列コンピューター断層撮影検査(CT)(中央・右図)

核磁気共鳴画像検査(MRI)

<入院精密検査>
心臓カテーテル検査

・左心カテーテル検査(冠動脈造影 左心室造影 大動脈造影 など)
・右心カテーテル検査(心内圧測定 心拍出量測定 短絡疾患の評価 肺動脈造影 心筋生検 など)

大動脈・末梢血管造影検査(大動脈瘤 腎動脈狭窄 鎖骨下動脈狭窄 など)

心臓電気生理学的検査

睡眠ポリソムノグラフィー(PSG)

○取り組んでいる治療法

病気は各個人によってさまざまな症状があり必要な治療法もそれぞれ異なります。当センターでは、全ての患者さんに食事、禁煙、節酒、運動等の一般生活指導また必要な内服治療を先行させます。しかし、病状が中等度以上に進行した場合には、より積極的な治療が必要となります。そのような場合、当センターでは身体への負担が少ないカテーテル治療を第一選択として実施を計画します。以下に治療法の一部を示します。

経皮的冠動脈インターベンション

経皮的冠動脈インターベンション(PCI:percutaneous coronary intervention)とは、狭くなった、あるいは詰まった冠動脈(冠動脈: 心臓の筋肉を栄養する血管)を治療するために行われる非外科的処置の総称で、虚血性心疾患(心筋梗塞 狭心症 無症候性心筋虚血)といった疾患を対象とした治療法です。大腿動脈(足の付け根)や橈骨動脈(手首)、あるいは上腕動脈(肘部)を通して、血管内に筒状のカテーテル(2~3mm径)を冠動脈入口部に持ち込んだ後、造影剤とX線イメージングを使用して冠動脈を観察します。その後、術者によりカテーテルの手元から冠動脈内に進めたガイドワイヤー(通常0.35mm)で病変部を通過させ、それに載せるかたちで(ガイドワイヤーをレールにして)バルーンカテーテルを病変部に進め、バルーンを拡張して狭窄や閉塞を解除します(POBA: percutaneous old balloon angioplasty)。その後、バルーンの外側に折り畳んだステント搭載した「ステント付きバルーンカテーテル」を病変部に持ち込み、内側のバルーンを拡張してステントを展開します。これにより血管の拡張状態を確実に保持することができます(ステント留置術)。
PCIは関連学会の専門医や認定医など一定の基準に達した熟練した術者が適切な施設環境において行うことを原則としています。(当院は日本心血管インターベンション治療学会認定関連施設に認定されています。)
PCIにかわる冠動脈血行再建術には、冠動脈バイパス移植術: CABG(しばしば「バイパス手術」と呼ばれる)があります。CABGは体内の他の場所から血管を移植することによって狭窄冠動脈を迂回する方法をとるため血管の中から治療するPCIとは発想が異なるものです。病変の数、病変の複雑さ、糖尿病患者など特定の状況下では、PCIよりCABGを選択する方が予後(命に関わる出来事を起こさない期間)が優れている場合がありますので、冠動脈造影の結果をもとに最適な治療法を提案いたします。

経皮的末梢血管インターベンション(下肢動脈・腎動脈・鎖骨下動脈など)

経皮的末梢血管インターベンション(PPI:percutaneous peripheral intervention)とは、狭くなった、あるいは詰まった末梢動脈(下肢動脈・腎動脈・鎖骨下動脈など)を治療するために行われる非外科的処置の総称で、下肢閉塞性動脈硬化症、腎動脈狭窄症、内シャント狭窄症などの疾患を対象とした治療法です。基本的には前述の経皮的冠動脈インターベンションと同様の手順で手技が進められます。

ペースメーカー植込み術

心臓は1日に約10万回もの拍動を繰り返しています。人生80年としますと、じつに30億回も拍動していることになります。心臓の中にある刺激伝導系という電気回路に電気が流れることで、拍動(脈)を生み出しているのですが、年齢とともに劣化していくことが知られています。脈が病的に遅くなる「徐脈」の主な原因は、興奮信号を発する機能が悪くなる「洞不全症候群」と、電気の通りが悪くなる伝導障害に分けられ、伝導障害は多くの場合、心房と心室の連結部(房室結節)で生じるため房室ブロックと呼ばれています。このような徐脈に対する最も有効で確実な方法はペースメーカー植え込み術です。
ペースメーカーは一般的には前胸部の皮下(鎖骨下のあたり)にポケットを作成し植込まれます。腕から心臓に血液が戻る静脈(一般的には鎖骨下静脈または腋窩静脈)を使って、ペースメーカー本体と心臓との間を電気的につなぐためのリード線を挿入し心臓内に留置します。リードの位置が決まったら、ペースメーカーとリード線を接続して前胸部のポケットに収め、皮膚を縫い合わせ消毒をしたら手術は終了です。手術時間はおよそ1~2時間です。

○超高齢化社会における心不全症例

近年、生活習慣の欧米化に伴う虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症など)の増加や高齢化による高血圧や弁膜症の増加などにより、心不全の患者さんが急増しています。心不全は、さまざまな心疾患がたどる終末像であり、高齢者がもっとも気をつけなくてはいけない心臓のトラブルの一つでもあります。罹患者数は全国で2030年には130万人に達すると推計されています。がんの罹患者数が約100万人ですから、心不全の患者さんがいかに多いかが分かります。高齢者の心不全は、心臓移植などの根本治療が適応外であるため、根治することはありません。入退院を繰り返しながら、生活の質(Quality of Life:QOL)が低下していくため、予後は悪く、医療経済的にも大きな問題となっています。高齢者、とくに後期高齢者では、心臓だけでなく、他にもさまざまな疾患を抱えていることが多く、フレイル(虚弱)やサルコペニア(筋力低下)、認知症といった特有の問題を抱えています。心不全の早期発見・治療もひとつの社会問題であり、そのため、医療機関のみならず地域全体でさまざまな職種が連携して、心不全の発症や重症化を防ぐための体制作りが急がれています。
われわれの施設では、すべての心不全症例に対して集学的治療、最適な薬物治療の調整、睡眠時無呼吸のチェックや酸素療法、また心臓リハビリテーションや栄養指導を含め幅広い視点からメディカルスタッフを含めたチーム医療を行い、高齢者であっても生活の質(Quality of Life:QOL)を落とすことなく生活が続けられるような最大限の配慮を行っております。

○診療実績

項 目 2017年 2018年 2019年
経皮的冠動脈
インターベンション
111 162 117
経皮的末梢血管
インターベンション
106 103 113
ペースメーカー植え込み術 25 14 20
体外式膜型人工肺 2 10 2
大動脈バルーン
パンピング
4 15 2

○連携先医療機関

心臓や血管の外科的手術の必要な患者様、血管再生術を目的とした細胞移植医療など高度先進医療の対象患者様には京都府立医科大学病院などへご紹介させていただきます。

○学会施設認定

日本循環器学会認定循環器専門医研修施設(施設No.1213)
日本心血管インターベンション治療学会認定研修関連施設(認定番号Y0292)

○診療スタッフ

院長・心臓血管センター長

古川 啓三(ふるかわ けいぞう)

出身大学:

京都府立医科大学(昭和48年卒)

最終学歴:

京都府立医科大学大学院医学研究科修了(医学博士)

専門分野:

心血管インターベンション 心不全 心筋症

専門医等:

日本内科学会認定内科医・指導医
日本内科学会認定総合内科専門医
日本循環器学会認定循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会名誉専門医
日本心臓リハビリテーション学会認定心臓リハビリテーション指導士
日本医師会認定産業医

所属学会:

日本内科学会
日本循環器学会
日本心臓病学会
日本心血管インターベンション治療学会
日本心臓病リハビリテーション学会

循環器内科部長

西尾 学(にしお まなぶ)

出身大学:

京都府立医科大学(平成4年卒)

最終学歴:

京都府立医科大学大学院医学研究科修了(医学博士)

専門分野:

心血管インターベンション 末梢血管インターベンション 循環器全般

専門医等:

日本内科学会認定内科医・指導医
日本内科学会認定総合内科専門医
日本循環器学会認定循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会認定医
日本心臓リハビリテーション学会認定心臓リハビリテーション指導士
日本人間ドック学会認定人間ドック健診専門医
日本医師会認定産業医

所属学会:

日本内科学会
日本循環器学会
日本心血管インターベンション治療学会
日本心臓リハビリテーション学会
日本人間ドック学会
日本呼吸器学会

循環器内科副部長

西澤 信也(にしざわ しんや)

出身大学:

関西医科大学(平成13年卒)

最終学歴:

京都府立医科大学大学院医学研究科修了(医学博士)

専門分野:

心血管インターベンション 心不全 心筋症

専門医等:

日本内科学会認定内科医・指導医
日本内科学会認定総合内科専門医
日本循環器学会認定循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会認定医
日本人間ドック学会認定医
日本医師会認定産業医

所属学会:

日本内科学会
日本循環器学会
日本心血管インターベンション治療学会
日本心臓リハビリテーション学会
日本人間ドック学会

循環器内科医員

高井 重樹(たかい しげき)

出身大学:

愛媛大学(平成20年)

専門医等:

日本内科学会認定内科医

所属学会:

日本内科学会
日本循環器内科学会
日本心血管インターベンション治療学会

循環器内科医員

三木 知紀(みき とものり)

出身大学:

京都府立医科大学

専門医等:

日本内科学会認定医、日本循環器学会専門医

所属学会:

日本内科学会、日本循環器学会、日本不整脈学会

応   援:

山田 浩之

京都府立医科大学循環器内科 准教授

中村  猛

京都府立医科大学循環器内科 准教授

そのほか京都府立医科大学循環器内科所属の多数の医師に協力していただいております。